大判例

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福岡高等裁判所那覇支部 平成5年(う)33号 判決

所論は,原判決は被告人が本件カリーナ及び本件クレスタが2個1車であることを秘して同車両を顧客に販売したことをもって,詐欺罪の欺罔行為があったとしているが,性能の面において2個1車とそうでない通常の中古車とはほとんど変わらないのであるから,被告人が本件各車両を顧客に販売するに当たり,同車両が2個1車であることを告げる法的義務はないから,これを告げなかったとしても,被告人に欺罔行為があったとはいえないというべきであり,この点原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用に誤りがあるというのである。

道路運送車両法41条は,自動車は,次に掲げる装置について,運輸省令で定める保安上の技術基準に適合するものでなければ,運行の用に供してはならないと定め,運輸省令である道路運送車両の保安基準18条では,自動車の車枠及び車体は,車枠及び車体が堅牢で運行に十分耐えるものであること,車体が車枠に確実に取り付けられ,振動,衝撃等によりゆるみを生じないようになっていることなどを規定している。記録によれば,運輸省地域交通局は,これらの法令に基づき,「改造自動車等の取扱いについて」と題する通達を発出しており,これには,2個1車のようにモノコック構造の車体を変更したものについては管轄陸運局長に車枠の強度検討書等の資料を添付して届出をする必要があるとされ,同局長の審査の結果,道路運送車両の保安基準に適合すると認められるものについては,改造自動車等審査結果通知書が届出者に交付され,改造自動車等の検査を申請する場合には検査申請書に右通知書等を添付するものとされ,これらの添付資料を参考として自動車の検査がされる旨定められていること,右強度検討書を作成するには,2個1車の切り継ぎ溶接部分の強度検査が必要であるが,沖繩県には右強度検査をする施設がないため自己負担で東京等の施設に車両を持って行き強度検査を受けなければならないことが認められるのであって,以上を総合すると,沖繩県においては,コスト面で採算が合わないため2個1車の製造者又は販売者が2個1車について東京等で強度検査を受けることは通常しないものであり,したがって,2個1車は自動車検査を受けても保安基準に適合しないものとされ,自動車検査証の交付を受けられない可能性の高い車両ということができる。仮に,2個1車について自動車検査証の交付がされたことがあるとしても,事実の問題として2個1車であることが見逃されたにすぎないものであり,自動車を購入する者にとって,同車両が法的に保安基準に適合するものであるかどうかについては強い関心を抱くところというべきである。

また,2個1車は,事故により後部が大破した車両の前部と前部が大破した車両の後部とを溶接して継ぎ合わせて製造されるものであり,一般の消費者にとっては,同車両の切り継ぎ溶接部分の強度検査がされていない段階では,同車両の安全性について不安を抱き,また,このような大事故車を継ぎ合わせた車両であって縁起が悪いとして,このような車両を購入することを避けるのが通常であるし,少なくとも通常の中古車と同程度の価格で購入することはしないことは,被告人も原審及び当審公判において自認するところである。

以上の説示に照らせば,少なくとも沖繩県においては,一般消費者が普通乗用自動車を購入するかどうか,購入する場合価格がどの程度であれば購入するかを決定するに当たり,購入車両が2個1車であるかどうかは重要な判断要素というべきであって,2個1車を販売する業者としては顧客との関係で販売車両が2個1車であることを告げる法律上の義務があると解するのが相当である。

したがって,被告人が2個1車を顧客に販売するに当たり,同車両が2個1車でないと誤信させてこれを購入させるために,同車両が2個1車であることを告げなかったことは,詐欺罪を構成する欺罔行為に該当するというべきであり,原判決には所論のいうような法令適用の誤りがあるとは認められず,論旨は理由がない。

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